未病

五月に入り、不安定な天気もひと段落し、初夏の雰囲気の漂う気候になってきました。

 

神奈川県は「未病を治すかながわ宣言」名付けて、健康寿命を延ばすよう取り組むことになりました。

それに伴って、神奈川県柔道整復師会も未病を治すサポーターとしての養成講座を行い、県民皆様の健康増進のお手伝いをしようと活動することとなりました。先日の日曜日にその養成講座を受講してまいりました。

そこで学んできたことを皆さんに知っていただきたいのでお話ししようと思います。

 

まず「未病」という言葉はあまり聞いたことがないと思います。

ですがこの言葉は鍼灸師やマッサージ師には馴染みのある言葉なんですね。

そう、東洋医学の言葉なんです。

健康から病気になるまでの流れがあるとして、病気になる手前を「未病」と位置付けているのです。

その病気の数歩手前の状態を、より健康に近づけることで病気を遠ざけようとすることが目的となります。

 

現在、平均寿命と健康寿命との間に10年の隔たりがあるそうです。

それは、亡くなるお年までに介護が必要な状態が10年程度あるという事なんです。

その健康寿命を少しでも平均寿命に近づけていかないといけません。

そのためにはバランスの良い食事、適度な運動、適度な睡眠、丁寧な歯磨きと衛生管理が必要とのことでした。

 

まず病気の原因ですが、遺伝は30%、生活習慣が70%と言われております。

その生活習慣から起こる症状で多いのが、高血圧、糖尿病、脂質異常。

そこから脳や心臓の梗塞や出血、血管障害などに発展していきます。

 

そして、意外と見落とされがちなのは歯周病です。

高齢になった時に歯を失う原因は虫歯よりも歯周病の方が主な原因になっております。

虫歯治療は進歩してきているという事なんですね。それよりも歯周ポケットや歯垢に溜まる歯周病菌が歯肉を弱らせ、結果、歯を支えられず歯を脱落させてしまいます。

あと歯周病により全身に炎症が広がってしまったり、歯磨きで落としきれてない汚れが間違って気管、肺に落ちてしまい炎症を起こす誤嚥性肺炎なども呼び起こしてしまいます。

高齢者の肺炎による死亡率は決して低くはありませんので、注意しなければならない病気の一つなんです。

 

あとは嗜好品になりますが、喫煙です。

やはりいろいろな病気を呼んでしまう喫煙ですが、今は医師の治療のもと、昔に比べて比較的簡単に辞められるようになってきています。あとは、何十年も吸ってきたから今更辞めても大差ないとか、高齢になって辞めても意味がないと思われがちですが、そんなことはなく、辞めることによって取り戻せる健康も多くあるそうです。

 

整形外科的には最近少しづつ世間に広まってきている「ロコモティブシンドローム」という言葉があります。

略して「ロコモ」と言うのですが、日本語では「運動器症候群」と言われ、運動機能の障害のために移動機能の低下をきたした状態を言っています。内科ではメタボ、整形外科ではロコモ、という風に覚えていただければ幸いですね。

お祭りやイベント会場でよくロコモ度チェックなどを行っております。一度体験していただき、自分の体がどのレベルか知っておくとよいでしょう。専用のホームページなどもありますのでチェックしておくとよいと思います。

 

食生活に関しては一汁三菜を目安にして、塩分と資質を抑えつつ、糖分も過剰に摂取しない食生活を目指していけると良いそうです。ただ、いきなり塩分などを減らすと味気無く感じてしまい長続きしないので、少しづつ減らしていくと良いそうです。

逆に高齢者に不足がちな栄養としてタンパク質があげられます。毎日の新陳代謝で入れ替わっていく細胞にはタンパク質が必要なのです。僕も治療院で患者さんによく言うのですが、お肉やお魚をお薬だと思って少しは摂るようにしてくださいと伝えます。

いろんな栄養素をまんべんなくバランス良く摂取する事が大切です。

健康食品やサプリメントなどに頼らなくてもバランスの良い食事で栄養素はまかなえます。

でももし健康食品やサプリメントを使用するときは、種類や効果にかなり差があります。

よく注意して摂取しましょう。

 

そして食事をするときはよく噛むということを心がけましょう。

弥生時代には一回の食事で3400回ぐらい咀嚼したそうです。それが昭和10年頃には1400回前後、最近では一回の食事で620回前後まで少なくなってきております。

よく噛むことで、唾液が出やすくなり、消化を助け、歯の病気を遠避け、味覚も発達し、脳の働きにも良い影響を与えます。

咀嚼することで筋力が鍛えられ言葉の発音が良くなったり、表情も豊かになります。

噛むことで良い効果を多くもたらしますので、是非一回でも多く噛むようにしましょう。

 

 

大切な睡眠に関しては、朝晩のメリハリをつけて、昼間に適度な運動をすることで良質な睡眠が得られます。

ただ長く寝ればいいというわけではありません。45歳前後で6.5時間、65歳で以上で6時間といった目安で睡眠をとるようにしましょう。長く寝すぎると逆に免疫機能が低下して風邪などを引きやすくなる場合もあるので注意しましょう。

うまく入眠できないという方も多くいらっしゃると思います。そのような方へのアドバイスとしては、眠くなってから寝床に入り、起きる時間を遅らせないことが良いそうです。寝床で長く過ごしていると熟睡感が減り、寝ないと!と思うことで逆に覚醒してしまいます。パソコンやスマホの液晶から出ているブルーライトは脳を覚醒させてしまう効果があるので、寝る前はパソコンなどをあまりせず、スマホもいじらないようにしましょう。

眠りが浅いときはむしろ積極的に早寝早起きが効果的だそうです。

 

運動についてですが、「3033運動」という目安になる言葉があります。

30分程度の運動を1週間に3回を目安に3ヵ月行うことで身体に良い変化を感じるといったものです。

運動は急激で激しいものでなければ、汗をかきながら体を動かすもので良いです。

簡単なもので言えばインターバル速歩というものがあります。

3分速足→3分普通の速度での歩行→また3分速歩・・・といったことを繰り返す歩き方です。

 

認知症予防には「コグニサイズ」というものがあります。

コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせた造語で、考えることと体を動かすことの二つを同時に行うことで、頭と体を同時に活性化させることを目的とした運動です。

例えば足し算をしながら体操をするといった複合的な内容ですね。

今あげた例以外にも色々な運動、体操がたくさんありますので自自分に合ったものを選んで楽しく長続きさせるということが大切ですね。

 

食事、運動、生活習慣など色々とお話ししましたが、何よりも大切なのは自分の身体の状態を知り、必要なことを長く続けるということです。そのためには健康診断をちゃんと受けましょう。

 

 

 

いつまでも健康で、行きたいところに行き、見たいものを見ることができ、食べたいものを食べ、したいことをすることができる。

これ以上の幸せはないと思います。

患者さんだけではなく県民の皆様の未病を治すサポーターとして皆さんの健康維持に尽力していきたいと思います。

 

 

 

 

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